朝から電車の中で酒を飲むと楽しい(らしい)

友人達に会いに電車で出かける。

 

平日だから空いているだろうと、高をくくっていたら
JRは結構混雑していた。

 

四人掛けの席が、一つだけ空いている所にどうにか落ち着いて
落ち着いてよく見ると、全員老人だった。もちろん自分を含めてだが。

 

乗り継ぎまで少し寝ようと目をつぶっていると、ゴソゴソ音がし出した。
どうも一杯やるらしい。

 

そっと見てみると、プラカップで日本酒をやり始めた。
準備万端でお出ましのようで、酒飲みの鑑のような御仁たちだ。
自分も斯くありたい思ったが、今日は手ぶらなのでそのまま寝る。

 

聞くとも無く聞いていると、どうやら七十年配のご様子。
現役時代の話から昨今の世界情勢まで、様々に話は進む。
世界各地で活躍してきたようだが、まぁ酒の上の話は大きくなるものだから。

 

背後では、外国人らしき観光客の声が聞こえる。
近頃はどこに行ってもそうだ。
インバウンドと、小金を持っている老人たちで日本は回っているのだろうか。

 

そうこうしているうちに、乗換駅に着く。
皆、椅子を求めて足早に列に並ぶ。
どうも遅延が出ているらしく、予定より時間がかかっている。

 

暑いような四月の日差しが、乗客の列に降り注ぐなか
ようやく列車がホームに入ってくる。

 

今度は余裕を持って座れる。
やはり四人掛けだ。

 

見ると、先ほど同席していた老人の一人が笑顔で話しかけてくる。
「またご一緒になりましたね」どうも話し好きのようだ。
そちらはアルコールが入って朝からご機嫌だろうが、こちらはそういうわけでは無い。

 

軽くなった口であれこれと話しかけてくるが、
なかなか話がかみ合わなくなってくる。

 

それでもどうにか適当に、当たり障りの無い話に落ち着けようとする。
それを遮るように、段々大きな声で物騒なことを言い出す。

 

自分の出身地で、友人たちと花見がてら旧交を温めようと言うことらしい。
自分の出身地は柄が悪いとか、今の首長は犯罪者の息子だとか
危なっかしい事この上ない。

 

日本人特有の謙遜とか、話を盛り上げようと言うことなのだろう。
しかしね、方向性は変えた方が良いんじゃ無いかな。

 

おまけに花見は口実らしく、現地に着いたら料理屋に直行するという。
折しも、現地で待っている友人からの電話で
「席は確保したからなー早う来いよー」と連絡が入ったようだ。

 

「最初から近所の居酒屋で良かったんじゃないですか?」
「そうですねん、ゲハハハ!」
などと言っているうちに、次の乗り継ぎ駅に到着する。

 

まぁ、千鳥足をもつらせて怪我でもするより
腰を据えて飲んだ方が平和でよろしかろうと思う。

それでは楽しんでくださいとホームで別れたが、もう顔も思い出せない。