家事と老人

ある程度の年齢になってから独り身になった老人は、およそ家事をしない。
そういう習慣が身についていないのだ。

男性向けの家事教室のようなものもあるらしいが、
やもめになってからそういう場所に行くのは
気恥ずかしさや見栄もあってかそう多くはない。
老人ならば尚更だろう。
そういう場所に行ける人は幸せなのだ。

自覚は無いかもしれないが、男性が家事をやると理屈っぽくなる。
自分がやることに正当性とか整合性を求めるのだ。
それを求めない人はおばさんに近いと言って良いだろう。
私がそうだ。

よく仕事は段取りが八分などと言うが、家事も同じだ。
ただ、基本的にルーティンワークが多いので先は読みやすい。
食品や消耗品の在庫チェックと掃除・ゴミ出しをこまめにやっておけば
やもめ暮らしでもウジがわくことはない。

あとは、見落としがちだが天気予報の確認も重要だろう。
乾燥機があっても、使えば電気代が一気にはね上がる。
乾燥機がなければ尚更だ。

部屋の中に干した洗濯物をかき分けながら生活するのはあまり楽しいものでは
ない。
予報をこまめにチェックしていつ洗濯するかを決めることが肝要だ。
また、不測の事態に備えて着替えの確認もしておきたいところだ。

洗濯自体は機械まかせだが、干したり取り込んだり畳んだりは手作業になる。
そこをどう省力化するかもポイントだろう。
体力の落ちてきた老人が、物干しに掛けたり下ろしたりするのは結構大変なの
だ。

私は洗濯物を干す時間は6時間と決めている。
外に干せる天気ならば、それだけあればまず乾く。
もし気になるようなら、室内で干すことになるがやむを得ないだろう。

そういう場合に備えて、風呂場とか洗面所などに、いわゆるつっぱり棒でも
張っておく必要がある。
ただ、それに頼りすぎると室内干しが恒常化する事になるのでそこは気をつけ
たい。

なお、6時間という数字は、午後2時を過ぎると大気中の水蒸気が下降してくる
という説によっている。
タイマーを使えば、朝起きたときには洗濯は終わっているのだから、午前8時
までに干せば良いのだし、夏場なら早く干せば午前中には取り込める。

夜間の洗濯は「夜濯」と言って、伝統俳句では夏の季語になっているぐらい
古来から有るらしい。
夜の内に干しておけば朝には乾くだろうという事なのだが、私はやらない。

湿度の高い時期に、わざわざ湿度の高い時間帯に干す気にならないだけだ。
部屋干しと同じように匂いが出ることもある。
部屋干し対応をうたう洗剤もあるが、匂いがなくなると言うより別の匂いにな
るだけだし、匂いの好みもあろう。

いずれにしても、どこに何がどれだけ有るかとか、洗濯機の使い方ぐらいは知
っておいた方が良いだろう。
何よりも自分のために。

そうだ、もうひとつ。
私は洗濯物は畳まない。
下着類や靴下は、それぞれに分けて平らにしておく。
シャツの類いはハンガーのままラックに掛けておく。
それだけで随分違うものだ。